168 中国古建築 瓦葺きの技術㉖ 大式燻瓦屋脊③寄棟造その他

中国古建築の瓦葺きの技術
「中国古建築瓦石営法」(劉大可　編著)ーーー抄訳

第五章　屋根
第五節　大式燻瓦屋根の棟
三、寄棟造建築の棟（※切妻造の大棟、降棟）
　　寄棟造建築の棟は　図5-1,5-4、5-76に示す通り。1．大棟
　　寄棟造建築の大棟工法は、尖山式硬・懸山建築の大棟の工法と基本同じである。異なるのは：
(1)圭角の下に勾頭を１枚据え、これを“坐中勾頭”と言う。坐中勾頭は両端の降棟当溝と交わるが、出は無い。
(2)圭角は瓦条の出と平で、天蓋外面は坐中勾頭の外皮にする。

2．降棟
　　寄棟造建築の降棟工法は、尖山式硬・懸山建築の降棟工法と似ている。異なるのは：
(1)寄棟造は推山のように作り、降棟は嚢を持つ（※嚢は反りのことらしい）。
(2)圭角・瓦条・盤子当の部材は、降棟と同一直線上にあり、咧角盤子等は要らず直盤子・直圭角に変える。
(3)当溝形状は大棟当溝と同じで良く、硬・懸山建築の降棟当溝の形状とでも同じで良く、即ち半円形か蕎麦状を呈し、これも漆喰で平に塗る。
　　燻瓦寄棟造（入母屋、宝形造を含め）屋根の隅棟の上に、套獣を装着しても良いが、もし子隅梁の先端が既に三岔頭様式ならば、套獣は要らず、遮朽瓦も要らない。　

四、入母屋造建築の棟
　　入母屋建築の棟は、図5-1,5-5、5-77に示す通り。1．大棟
　　大式燻瓦入母屋造は一般に尖山形式で、極く少ない巻棚屋根があり、大棟は一般に大脊を造る。その工法は尖山式硬・懸山屋根面の大棟工法と完全に同じである。

2．降棟
　　入母屋造の降棟は、硬・懸山の降棟獣後工法は同じ。入母屋造の降棟は獣前が無く、獣座下面は勾頭１枚を据え、勾頭の四周は漆喰で密に塗り平に均す。この勾頭を“吃水”と言う。“吃水”は獣座前端と平にする。

3．戧脊
　　戧脊工法は、硬・懸山降棟後方に似ている。但注意するのは：
(1) 戧脊獣後は降棟に比べてやや低い。一般的に言えば、部材の規格は同じで、蓋脊筒瓦の睁眼上（※両目を開けること。孔）を適宜減らしても良い
(2)圭角や盤子等は、戧脊の同一磚上に有り、即ち圭角・盤子は直圭角・直盤子とする。(3)降棟と交わる瓦部材は割角にする。

4．博脊
　　布瓦入母屋博脊は2種の工法がある。１種は仿琉璃挂尖工法で、博脊の両端が排山勾滴の中に入る。博背両端の瓦部材は、挂尖の角度に似せて割って造る。
もう１種の工法は、勾滴の中に入って、戧脊と交叉し、尚且つ，布瓦入母屋造博脊の眉子の幅に一定程度の伸縮性を持つことができて、それにより琉璃を真似ずに博脊の位置をその様に固定し、但できるだけ博脊は層毎に戧脊獣後の層と順々に交叉させていく。実際に交叉しない時は、博脊の両端を斜め上方に向かって積み上げ、戧脊と交叉する位置を求める。図5-88(b)、(c)。　　博脊の層の瓦部材は：当溝、頭層瓦条、２層瓦条、円混、蓋脊筒瓦で上に眉子を塗って載せる。どの層も導糸を張り漆喰を敷いて積み上げ、内側に漆喰とレンガを密に詰めて平に均し、眉子は泛水を塗り出し、妻壁とは堅く交わる。体積の大きな建築の博脊は、陡板を１層と混磚を１層加え、正吻と同じ工法を採用する。

五、宝形造建築の棟
　　大式宝形燻瓦屋根の棟は、図5-78に示す通り。1．宝頂
　　第６節の小式燻瓦の棟　三、宝形造の棟の関連する内容を参照。

2．降棟
　　寄棟造降棟の工法と基本的に同じ。降棟と宝頂の交叉は、図5-78,5-94に示す。

六、重層建築の棟
　　重層建築の上層の棟の工法は、寄棟造、宝形造、入母屋造の棟の工法と完全に同じ。言うまでもなく上層がどんな形式であっても、下層の棟は２種だけで、即ち圍脊と隅棟である(図5-1、5-7、5-79）。1．圍脊
　　圍脊の工法は、上層の博脊の工法と同じで良く、尖山建築の大棟工法と似る。上の桁から寸法を決める方法は琉璃瓦の方法を参照し、注意するのは：
(1)大棟の工法と同じ場合は、四隅に合角吻を据え、合角吻は瓦条の上にある。博脊工法と同じ場合は、合角吻は用いなくて良く、合角吻が無い場合、４条の圍脊が取り囲む。
(2)眉子は泛水を塗り出し、木の額枋の下面に堅く接する。
(3)陡板は当溝に基づき、大額枋下面の高さに至り、その他の部材及び眉子泛水を減らして、高さに残る寸法を決める。

2．隅棟
　　入母屋造の戧脊或は寄棟造の降棟工法と基本的に同じ。隅棟の総高さは合角吻の腿肘を超えてはならない。合角吻と交叉する棟材は“割角”をして、交叉の接合の緊密差を保証する。



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